茨城県つくば市・土浦市を拠点に高断熱、耐震設計の新築注文住宅を施工する工務店です。完成見学会も定期的に行っています。

2016年6月2日

建築基準法と条例③

最近のお話しなのでご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、結果からいうと完成間近のマンションが近隣住民からの訴訟で、確認申請取り消しになり解体しなければならない事態に陥ってしまった訴訟問題です

【たぬきの森 Sマンション訴訟】
S区S町4丁目に約570坪と広々した敷地に旧宅と立派な日本庭園が広がっていました。しかしそこで相続問題が発生し、この敷地と家屋が開発業者の手に渡ってしまいます。旧所有者や保存を望む方々が基金を作り寄付を募りました。集まった募金や区の資金約7億円での買収を試みますが業者は10億円以上でないと譲らず結果的に不調に終わってしまいます。

その後開発業者はマンション工事に着手します。確認申請自体に不備はありませんでした。それでも確認申請が取り消されてしまいます。

そこには東京都の「建築安全条例」というものがあったからです。同物件は敷地面積約1,870㎡、地上3階建て・総戸数30戸、延べ床面積約2,800㎡のマンションです。敷地は路地状部分が道路に接しています。建築安全条例によると、延べ床面積が2,000㎡超3,000㎡以下の建物の場合、接道義務は8m(ちなみに建築基準法では2m)。つまり路地状部分の巾が8mなければいけない事になります。実際は8mなかったのですがS区では開発内容を総合的に判断して安全性に支障はないと判断。特例でOKを出し、確認申請許可を取り付けた形です。言わば合法で許可を取った形でした。

それでも周辺住民らは建築確認の取り消しを求めて東京地裁に提訴します。地裁は住民の訴えを却下

しかしその後の控訴審、東京高裁は特例での建築確認は違法、逆転判決を言い渡します。

そして20091217日最高裁は上告を棄却、高裁判決を支持し判決は確定します。

工事は当然中断になり2010年開発業者がS区へ損害賠償を求めて提訴を起こします。内容は「違法な建築確認を許可した事による損害賠償」です。賠償額は26億円。現在も係争中です。

以上が簡単な内容ですが、ここで問題となるのは条例を特例とはいえ合法と判断した新宿区が裁判で違法と判断された事です。つまり絶対的な建築に関する権力者である区長・建築主事(建築確認申請の許可判断をする人)が司法に屈服した形です。実際現行制度から考えてみると自治体や建築主事などに加えて裁判所の判断も加わる場合、その建築計画が適法なのか違法なのか予見しづらいケースがあります。

それは建築確認が施工側からしか提出できないからです(業者の言い分しかわからない)。

そう考えると少しでも建築基準法や都市計画法に無理がありながら計画を強引に進めると、周辺住民から提訴され今回のような着工後にも関わらず確認申請が取り消しになるリスクがある事を認識しなければならなくなっているのかもしれません。

事業主側の申請だけで判断して建築確認申請が許可される現在の仕組みでは、周辺住民が計画に異議を唱えるには裁判しかありえないからです。つまり周辺住民との意見交換を十分に行わないと痛い目に合う可能性があるという事になります。

現在確認申請特定行政庁(土浦市、つくば市、取手市など)と民間審査団体で審査する事が可能です。あの有名な姉歯事件以来、民間審査団体はかなりナーバスになっているのは否定できません。実際民間で許可した確認申請を裁判に依らず特定行政庁の権限で取り消しにする事が可能です。つまり住宅レベルでも十分許可の取り消しをされる事もあり得る話しなのです。

話しは戻りますがS区のマンション訴訟の事を「たぬきの森」に掛けて「たぬきのタタリ」と言うそうです

これぞまさしく「平成狸合戦ぽんぽこ」かもしれません