茨城県つくば市・土浦市を拠点に高断熱、耐震設計の新築注文住宅を施工する工務店です。完成見学会も定期的に行っています。

2016年3月31日

建築基準法と条例②

前回は建築基準法と条例の関係をお話ししましたが、今回はその条例が諸刃の剣になってしまった事例をいくつか紹介致します

【T市パチンコ店訴訟】
事の発端は1994年に準工業地域でパチンコ店の建設を始めたのがきっかけです。T市では1983年にパチンコ店の出店を風俗営業法の規定より厳しく、商業地域に限定する独自の条例を制定した事から市は業者に工事禁止を求める仮処分を申し立てました。その後市は訴訟を行いましたが2002年に敗訴確定(最高裁判決)というものです。

ここで問題になるのは訴訟の内容です
論点は二つ

法律(風営法)より厳しい条例は有効か?
行政上の義務履行を民事執行が可能か?

②番に関しては今回の内容にはあまり関係がないのでさておき、①番については第1審の神戸地裁、第2審の大阪高裁は共に条例が風営法に違反するとして無効の見解を示しています(最高裁では言及されず)。つまり条例で定めているからといって行き過ぎた条例は、法律より厳格な上乗せ規制と判断され法律との均衡を失い矛盾しているという話しです。この話しには後日談がありその後工事中止(結局訴訟中に業者が工事を断念)を理由にパチンコ店が市を相手取り損害賠償訴訟を起こした事です。結果最高裁で上告棄却され第2審大阪高裁判決により約5億円の賠償金が確定しています。

【Kマンション訴訟】
1999年M不動産はK市にある大学通りの一角を購入、そこで高層マンションを計画します。内容は14階建て高さ44mのマンションです。K市の条例「中三丁目地区計画」では高さ20mまでに規制されています。この事で起こった訴訟問題になります。

まず問題となったのはこの条例がこのマンションを規制するために狙い撃ち的に条例が制定されている点です

つまりマンションの確認申請が許可された時点ではまだ条例が制定されておらず、どのタイミングが条例違反に適用されるのかが争点になりました。一般的に法令の改正等で新たな規制が求められている場合、その規制は工事中の建築物には適用されません(しかし既存不適格になります)。ただし建築確認許可後でも着工していなければその規制に従わなければなりません(従わない場合は違法建築)。つまりどの時点が着工に値するかという事です。今回は根切り(土工事)が着工とみなされるという判例が出ています(現在もこの判例基準が採用されています)。結果14階建て高さ44mのマンションは適法だが既存不適格という扱いで収まりました(既存不適格とは現行法には合致しないので将来的な建て替え等や増築、改築などに制約が生じる)。この問題はその他にいろいろな訴訟に発展しています。

①市議会議決(条例)の無効確認訴訟(条例制定の無効)
②反対住民の事業者への建築物撤去請求訴訟(違反部分高さ24mを撤去)
③事業者のK市への損害賠償訴訟(営業妨害)
④住民からK市への住民訴訟(市長への賠償請求)

①②は敗訴。③は約3,000万円の賠償が確定しています(M不動産は全額国立市へ寄付。目的は金銭ではなく正当性を立証するため)。④は③の結果が市長に責任があるという点において賠償が確定しています(約3,000万円の賠償金額)。

次回は近年稀見る問題訴訟をお話し致します